第八話 16:26―21:31
侑:あ、すみません先輩!傘持ってもらいっぱなしで。交代します。
燈子:いいよ、別に。
侑:でも…
燈子:背が高いほうがさせばいいじゃん。
侑:そんな気にするほど違いませんって。
燈子:いやいや、10センチは違わない?
侑:え?さすがにそこまでは…
燈子:私、163センチだけど。
侑:んっ?んっ…
燈子:ほら、返しなさい!信号青だよ。
侑:嫌だ!ていうか先輩!そっち側すっごい濡れてるじゃないですか!
燈子:え?
侑:先輩の傘なんだから、自分の方さしてくださいよー!
燈子:だって!侑が濡れるのが嫌だ!
侑:嫌だじゃない!
燈子:もう…
侑:だって先輩が!
燈子:なにこれ。変なの。
侑:あはははは…
燈子:侑の思いっきり笑ったところ、初めて見た気がする。
侑:そうでしたっけ?先輩といると困らされることが多いからじゃないですか?
燈子:私といると困る?
侑:(困らないよ。だって今、私、楽しいと思う。)今は先輩が風引いちゃうほうが困りますから。ほら、そこにちょっと入りません?
燈子:平気だよ。
侑:いいからいいから。ちょっと待ってください!確か…
燈子:すごい!そんなの持ってるんだ。
侑:誰かさんが毎日体育祭の練習するぞって言うから。念のために、汗拭き用に持ってきてるんです。
燈子:侑って面倒見いいよね。侑も妹なのにな~
侑:じっとしててください!はい!もう一度。
燈子:面倒見がいいから、甘えすぎてないかって、ちょっと心配。本当は、私の相手をするのいやだったり、疲れたりしてるのに、我慢してくれてるだけかもしれない。嫌われたらどうしようって。大丈夫?
侑:(それを私に聞いてしまうのが一番の甘えじゃないだろうか。甘え上手は妹属性なのかな?)大丈夫。面倒見てるなんて思ってませんよ。今日だって、先輩が来てくれて、助かりましたし。それに、うれしかった。
燈子:うれしかった?(そのうれしいってどういう意味?)
侑:あ、いえ、ただ今日はいろんな人に置いていかれたり、振られっぱなしだったから。先輩が来てくれて、安心したというか。それだけで、変な意味じゃないですよ。
燈子:そうだよね!侑は。私もうれしいよ。侑と相合傘できて。
侑:相合傘って。改めて口にすると、恥ずかしくないですか?
燈子:え?じゃなんて言えばいいの?
侑:分かんないけど…
燈子:ね、侑。もうちょっとここにいようよ!だめ?
?侑:いいですよ。
燈子:やった。
侑:(暖かい…先輩って体温高いよな。私が低いだけか。分けてほしい。いいか。このままでも。)先輩は何色が好きですか?アジサイ。本当…七海先輩って…