空の境界 1/俯瞰風景/0-2
听书  >  轻小说
播放:73
弹幕:0
投食:1
喜欢:1
发布于:2019-05-14 12:57

幹也は部屋の真ん中に座った。私は幹也の背後にあるベッドに腰を下ろすと、そのまま体を横にした。

幹也は私に背中を向けたままだ。

 その、男にしては小柄な背中を、私はボウと観察する。黒桐幹也という名前をしたこの青年は、私とは中学時代からの友人であるらしい。

 数々の流行が次々と現れては疾走し、あげく暴走したまま消滅するという現代の若者の中で、退屈なまでに学生という形を維持し続けた貴重品だ。

 髪も染めないし、伸ばさない。肌も焼かなければ飾り物もしない。ケータイも持たなければ女遊びもしない。背は百七十に届くか届かないか程度。温和な顔立ちは可愛い系で、黒縁の眼鏡がその雰囲気を一層強めていた。

 今は高校を卒業して平凡な服装をしているが、着飾って街を歩けば通行人の何人かは目に留めるぐらい、実は美男子ではないだろうか――――

「式、聞いてる? 君のお母さんにも会ったよ。一度は両儀の屋敷に顔ぐらいださないとダメじゃないか。退院してからふた月、連絡も入れてないんだって?」

「ああ。とりわけ用が無かったから」

「あのね。用が無くても団欒するものなんだよ。家族って。二年間も話してなかったんだから、ちゃんと会って話をしないと」

「……知らないよ。実感が湧かないんだからしょうがないだろ。会ったってよけいに距離が開くだけだ。おまえとだって違和感が付きまとうっていうのに、あんな他人と会話が続くもんか」

「もう、そんなんじゃいつまでたっても解決しないだろ。式のほうから心を開かなくちゃ一生このままなんだぞ。実の親子が近くに住んでいるのに顔も合わせないなんて、そんなの駄目だ」

 責めるような言葉に私は眉をひそめる。

 駄目だって、何が駄目だというのだろう。私と両親の間にはなんら違法な物はない。たんに子供が交通事故にあって、以前の記憶を損失してしまっただけなのだ。戸籍上も血縁上も家族だと認められているんだから、今のままでも何ら問題はない筈である。

 ……幹也はいつも人の心の在り方を心配する。

 そんなの、どうでもいい事だっていうのに。